2020年4月19日説教要旨
「再会は突然に」
出エジプト 15:1~11
ヨハネ福音書 20:19~29
ローマ・カトリック教会にはたくさんの聖人がいて、それぞれに何かの守護聖人として敬われているそうだ。今日のトマスはインドに渡って宣教したという伝説があり、今もムンバイで船大工や細工人の守護聖人とされているそうだ。今日はそんなトマスの一人語りというのをお聞きいただく。
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わいなぁ、あの一言今でも後悔してんねん。そらそうやん。今思い出しても腹の底から苦いもんがじわ~っと出てくるで。イェス様が復活した日な。十字架からこっちみんな寝られへんし、どうしてえぇのかわからんでぼ~っとしてたんや。あの日、朝イチで女の人らが、イェス様の身体がお墓から消えた言うてきてん。ペトロともう一人がお墓まで行ったけど消えてた言うてるとこへ、また女の人が来て、イェス様に会うた言うてな。そんでもみんなそんなことあるかい言うて信じひんかってん。
わいもな、そんなん言われたかて信じられへんやん。そんでな、昼過ぎにこれからどないしょうか思て、外へ出てフラフラしてたんや。暗なってから帰ってみたら、みんながイェス様が来たぁ!復活やぁ!言うて大騒ぎしてんねん。えぇ⁉と思たけど、みんなが会うた言うてんねんから、そうなんかなぁと思てたんや。そん時や、誰かがわいの肩、ポンと叩いて「残念やったなぁ」って言いよってん。そんなんムカッとくるやろ。そんで思わす言うてしもてん。「イェス様の手に釘の跡を見て、そん中に指突っ込んで、ついでに脇腹にも手突っ込んでみんと信じひんわ!」。言うてすぐに、しもたぁ!と思たで。お祭り騒ぎやったさかい、大して誰もどないも思てへんと思うわ。そんでもな、やっぱり後悔したんや。居心地も悪いし、一緒にお祭り騒ぎもでけへんしな。
それからや。1週間くらいしてみんなと一緒におる時にイェス様が来はってん。びっくりしたし、そらめちゃめちゃ嬉しかったで。けどな、大声で「イェス様、万歳!」って言う前にな、イェス様から言われてん。「指をここ入れてみ。その手を槍の跡に入れてみ。信じん者やなしに、信じる者におなり」て。それ聞いて涙出たで。自分の言うたことイェス様に知られてしもて。本気で言うたんと違いますねんて言いたかったけどな。言うてしもたもんは、しゃあないやん。なんか言うたけど、「イェス様、万歳!」やなかったなぁ。
あんた今からエルサレムの方へ帰るんやろ。エルサレムに帰ったら、ペトロやほかのみんなによろしゅう言うといて。こんなとこで会うたんも、イェス様のお導きや。えっ、わいか。わいなぁ、これからこっちの船に乗ってインドいうとこへ行くねん。あっちでイェス様のこと話しして歩こ思てな。たった一言で後悔したやつが、こんどは船で長い航海するやなんて、ようでけた話やろ。
みんなによろしゅう言うといてな、頼むで。ほな行ってくるわ。みんなにシャロームやで。
森 哲