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信仰の先達と教会のこれから

 最近、内村鑑三作による次の詩を見つけました。

 

「ベタニアのマリア」

ああ、ベタニアのマリア!

あなたは永遠のナルドの香り、女性の中の女性です。

祝福が女性にありますように。

混じりない直感を持って人の子の孤独を知り、

できる限りを尽くして、

彼の死を助けた不朽の愛よ。

しかし、あなたの名を福音とともに不朽のものとしたイエスの愛は、あなたの愛よりさらに大でした。

 

 また下に記したのは、私が以前母校でピアノの教員をしていた頃知ったのですが、ガールリザーブ(Girl Reserve)のモットーという昔学生達に与えられていた標語です。

 

動作を優雅にし、判断(おもい)を公平(ただしう)し、奉仕を怠らず、友には信を尽くし、最善を慕い、志望(こころざし)を堅(かとう)し、美しきを求め、知識を探り、神を崇敬ひ、己に勝ち、信用を重んじ、誠實(まこと)を忘れず。

妥協なき渡世を我は努めん。しかして、最善を求め、最善を與(あた)ふ。

 

 恐らく戦前、婦人宣教師でもあった何代目かの米国人院長が生徒らに紹介した奨励の言葉です。私はこのモットーに触れ、聖書の中の女性ではベタニアのマリアのような人が理想的かもしれない、と憧れを抱いておりました。

ジェンダーに関しては、母子家庭の貧困率、東京医大で女子が不利に扱われた不正入試問題など、昨今の日本もフェミニズムの実現されている社会とはとても言えません。けれども敬愛するキリスト者の先達内村鑑三が私と同じ女性観価値観を持っておられたのを知り、とても嬉しく思いました。

 

 私に洗礼を授けてくださった故古河治牧師も母校の中学部の礼拝にお話にお出で下さったことがありますが、残念ながら内容は記憶に残っていません。でもご自身の信仰に至る道程は何度もお聞かせ下さり、多大なインパクトを受けました。

東大医学部をご卒業され太平洋戦争に出兵なさったお兄様が潜水艦で戦死、同じ頃故郷の鳥取大震災では甚大な被害を被り、当の治先生は肺結核重病者の特別病棟で死の順番待ちをされていたとか。そんな絶望の淵で悶々とされていた時にふっと手に取って読んだ本が、賀川豊彦著の「残されたる刺」でした。

その中に「我が恩恵(めぐみ)なんぢに足れり、我が能力(ちから)は弱きうちに全うせらるればなり」(第二コリント129節)という聖書の引用があり、これにより神様のご臨在に震わされ、信仰告白するに至ったという事です。

 賀川豊彦は日米開戦の危機を察知し、あのスタンレー・ジョーンズ博士と共にワシントンと東京で1週間連日徹夜祈祷会を開いていましたが、その直後真珠湾攻撃の報が流れたという逸話は感慨深いものです。

戦後お元気になられた古河先生は、賀川氏の講演会の追っかけ(笑)をされていたとも耳にしました。ですから、そういう意味で、香櫨園教会は賀川豊彦の素朴で実直な信仰を土台としてその上に築き上げられた教会であるということができると思います。この尊い礎の上に建つ香櫨園教会が、信仰の先達とまた二千年に及ぶ教会史の過ちの経験からも学び、神様に喜ばれる御心に添った教会に成長してゆくことを、日々心よりお祈り申し上げたく存じます。

S.M

 

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