
大学時代にトレーニングで鳥取の白兎海岸までよく走っていました。この海岸はハマナスの南限地であり「国の天然記念物」として指定された場所なのですがあまり知られていません。
ここに育っているハマナスは氷河期の白兎海岸に辿り着いて以来、ひっそりと息を潜めるように生きてきた花たちなのです。彼らの小さな声を聞き分けようとこの地を訪れる人は非常に少ないのです。砂地にしっかりと根を張りピンクの花を一斉に咲かせる非常に愛らしいバラ科の花、それがハマナスです。
秋には真っ赤な実をつけるところから浜梨と言われていたことからハマナスの名がつけられたそうです。太陽がいっぱいの夏に比べて鳥取県の東部は雪に閉ざされる厳しい冬が待ち構えています。
ここに佇んでみると「これからも俺たちは、精一杯根を張って生きていくぞ!」という彼らの逞しい声が聞こえてくるようです。彼らのこの輝きは冬の厳しさを生き抜けてきた強かさの証だったことがわかります。彼らのこの強い願いをぜひ絵にしてみたいなと思って描き始めました。
絵画・文 田中基信
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