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「高山植物の女王・コマクサ」


「高山植物の女王・コマクサ」         

 高山植物の女王と呼ばれるコマクサをご存じでしょうか? 漢字では「駒草」と書き、由来は花の形が馬(駒)の顔に似ているからだそうです。そう言われて見れば確かに馬の横顔そのものですね。

 私が初めてこの花に出会ったのは北アルプスでした。名前は知っていたのですがその姿は写真でしか見たことがありません。ですから彼らに出会った時にはしばらく身動きできないほどに見惚れて佇んでいました。天気は良かったのですが2000mを超える稜線です。しばらくすると汗も引いて寒くなってきました。そのコマクサは、わずか20センチほどの草丈ですが実に見事な色合いでした。どうしてこんなに色鮮やかに輝いているのでか不思議に思いました。コマクサは、ほかの植物が生育できないような高所の砂礫地に咲き、条件の合う山に登らないとなかなか見ることができません。 また朝夕の寒暖差が大きい高山という厳しい気象条件で咲く花だからこそこんなにも艶やかな姿を見せてくれるのでしょう。

 さて、この絵の取材地は信州ではありません。六甲山高山植物園で出会えるのです。こんな手頃な所で毎年見られるとは何て素敵なことでしょう!その他、たくさんの高山植物にも出会うことができました。コマクサの右側にある風車のようなチングルマの綿毛、その上にはミヤマオダマキ、左隅にあるのがヒダカミセバヤ。どの花も高山という厳しい生育条件の中でしっかりと生きている植物たちです。

絵・文 田中基信

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