この絵は、妻と一緒に淡路の水仙郷を訪れたときのものです。癌闘病二年目の春でした。彼女は「何事も、どうせやるなら楽しく」という生き方を、言葉ではなく、その身をもって示してくれました。闘病という、決して楽しいとは言えない日々のなかでも、自分の時間を自分の歩幅で生き抜こうとしていたのです。
ぼくが病室を訪ねると、妻はいつも変わらぬ笑顔で迎えてくれました。ベッドに横たわりながらも、その表情には、病に押し潰されることを拒む静かな強さがありました。
ある日、二人の大切な思い出が詰まったこの絵を描きあげ、病室に持って行きました。絵を見た瞬間、彼女の顔がぱっと明るくなり、看護師さんたちに向かって、描いた場所やそのときの思い出を楽しそうに語り始めました。その姿を見て、ぼくは胸をなで下ろしました。彼女はまだ、自分の時間を自分の言葉で生きている――そう感じたからです。
その笑顔が途切れることなく続いてほしいという願いは、今もぼくの胸の奥で、静かに生き続けています。 Her smile will stay with me forever.
文・絵 田中基信