「夏を抱く花」
目の前には、まるで南の島の太陽がそのまま花になったかのような、見事なハイビスカスが咲き誇っています。花の中央からは一本の長いしべの柱が突き出し、その側面は黄色い葯(やく)が並んでいます。その姿は、まるで花自身が空に向かって指を伸ばしているかのようです。
朝の光を全身に浴びて大きく開いた花弁は、燃えるような赤に染まり、風に揺れるたに生命の息吹を感じさせます。その姿を見ているだけで、胸の鼓動まで高鳴ってくるようです。この花には灼熱の太陽がよく似合います。
これほどまでに生命力にあふれ、見る者の心を捉えて離さない華やかさを持ちながらハイビスカスの一輪の命は驚くほど短いのです。多くの花は夕暮れを待たず、静かに花弁を閉じていきます。その潔さは、ひとときの輝きにすべてを注ぐ生き方のようにも思えます。
どこまでも続く青い空を背景に、堂々と咲き誇るハイビスカス。その鮮烈な赤を見つめていると、子どもの頃の夏休みの記憶がふわりと立ち上がってきます。果てしなく湧き上がる入道雲。汗ばんだ額をやさしくなでていった潮風。遠くから聞こえる蝉しぐ
れ。
ああ、あの懐かしい夏の情景が、この花には実によく似合うのです。
(取材地 宮崎県青島神社)
絵・文 田中基信